Piakanaの日記

音大ピアノ科卒。クラシック、ポップス、ジャズさまざま弾いています。音楽の事、日常の事など不定期投稿していきます。YouTubeに動画投稿していますのでリンク欄からご覧下さい。

モンゴル講演会

令和5年の大相撲が全て終わりました。

11月26日は、九州場所の千秋楽でした。

今場所の優勝力士は、大関霧島関(元霧馬山関)です。13勝2敗でした。

横綱不在で3大関が拮抗するかなと思っていた場所でしたが、他2人の大関貴景勝関、豊昇龍関)が千秋楽を待たずに優勝争いから脱落。

唯一、平幕で優勝争いに食い込んだ熱海富士関も、千秋楽で琴ノ若関に土をつけられ、霧島関が結びの相撲を取る前に優勝が決定。

自動的に優勝が決定した後も、霧島関はしっかり勝ち星をあげて、自身の優勝に花を添えました。

大関の中では霧島関が1番安定してるかなーと思ってたら予想的中です。

やはりモンゴル出身は強いですね。

また1人モンゴル出身力士が横綱に近づきました。

 

僕は割と相撲は見る方でして、番付表や取組表なんかはたまにチェックしています。

別に毎日誰が勝った負けただの追う程ではないですが、時間が合えば適当にNHKをつけて相撲中継を流しておく習慣があります。

強いて言えば同年代の遠藤関を少し応援しているでしょうか。

今場所は東前頭8枚目で10敗しちゃったから来場所は幕内ギリギリかなー。

 

で、記事を遡って頂ければわかると思いますが、僕今こんな体調じゃないですか。

あまり家から出ることが出来ず、酷いときはベッドから動けなくてうんうん唸ってるだけの時もあるわけです。

だから、今場所は相撲中継をずっと流していたんです。

特に今回の九州場所中の僕の体調は悪くて、何か暇潰しを探しているとABEMAにも相撲ライブ配信があるのを見つけてしまったんですね。

これが午前から全取組を配信しているんですよ。

普段NHK総合テレビでやってるのは早い時間から始まっても15時位からで十両力士の取組からです。

相撲番付(階級)は上からこんな感じです↓↓

  1. 横綱
  2. 大関   (小結・関脇・大関三役
  3. 関脇
  4. 小結
  5. 前頭   (前頭から上位が幕内
  6. 十両   (十両から上位が関取
  7. 幕下
  8. 三段目
  9. 序二段
  10. 序の口

 

ABEMAでは午前10時前の序の口の取組から配信していました。

普段、関取以上の取組しか見たことなかったから新鮮でした。

まだまだ髷も結えない、体も小さい若い力士達が頑張っています。

行事も呼出も二十歳いくかいかないかの若い人が頑張っていました。

 

少し前に引退したモンゴル出身の大横綱白鵬も嘗ては序の口で、しかも負け越しをしていました。

あの白鵬でもそんな時期があったのだから、今見ている序の口のもやし力士達からも将来大横綱になるような人材が現れるのかなーと思いながら見てると不思議な気持ちになります。

 

 

それでその白鵬なのですが、現役バリバリ時代に僕は会ったことがあります。

確か10年くらい前だったと思うのですが、JTBと駐日モンゴル大使館共催のモンゴル講演会なんてものが開催されました。

モンゴル国

別に特段モンゴルに思い入れがあったわけではなかったのですが、度々当ブログに出てくる旅行好きの叔母が

「ぴあかなちゃん!楽しそうな講演会があるのよ!あなた相撲すきだったっけ?横綱白鵬もゲストで来るからどう?一緒に行かない!?3人いけるから私と妹(僕の母)とぴあかなちゃんで行かないかしら!?」、と誘ってきました。

 

普段だったら早急にお断りを申し上げるところ、この誘い文句には流石に心が揺れ動きました。

行ったら行ったで叔母の機関銃トークを全身に浴びるのがめんどくせぇ。

でも、白鵬見てみたい!

教育・社会心理学でいう3つの葛藤の『接近-回避型葛藤』の最たる例ですね。

・ドーナツ食べたいけど(接近)、太るのが嫌だ(回避)

・ゲームを買いたいけど(接近)、お金が減るのが嫌だ(回避)

白鵬を見に行きたいけど(接近)、叔母の銃弾を浴びるのが嫌だ(回避)

 

数日間悩みましたとも。

半日で3日分くらいの体力持っていかれるからね。

でもまあ叔母も好意で誘ってきてくれている事。

最近、断り続けているし無碍にも扱えないあ。

すると叔母から「久しぶりに3人で会うから講演会の後にご飯でもと思ったけど、ちょっと用事があって現地解散になるかしらね。ぴあかなちゃん行くの決まったかしら?」と。

来ました。これは大きな加点です。

現地集合・現地解散。そして僕が来るという事実は双方にとってメリットでしかありません。

僕は遂に重い腰を上げて、首を縦に振るのでした。

終わったらとっとと決まり手『送り出し』を決めるぜ。

 

当日は母親と一緒に会場へ到着。

僕が来た事でなんかキメてんじゃねーのってくらい上機嫌な叔母。

会場は白鵬目当ての人が多いのか満員御礼状態。

叔母が席取っといてくれていたみたいなんですけど、僕はもっと壇上に近い席へ離脱。

結局3人バラバラで聴講するのでした。

 

講演会の前半は正直殆どがどうでもいい話。

たぶん向こうの偉い人かなんかが話したり表彰されたりしてましたが、天井の照明の数を数えるくらいずっと暇でした。

そんな中、唯一身を乗り出して聴いたのが、モンゴル民族楽器『馬頭琴(モリンホール)』の演奏でした。

民族衣装を身に纏ったプロを呼んで来て、とても素敵な演奏を聴かせてくれました。

馬頭琴 Wikipediaより。

馬頭琴はその名の通り、楽器の先端が馬の頭の形になっている弦楽器です。

少し小さめのチェロと言ったところでしょうか。

しかしその弦はなんと2本しかありません。

西洋音楽と違い、ポルタメント(音から音へ徐々にグイィィンって移動する奏法)多め。

中国の弦楽器『二胡』と近い楽器ですが、二胡ほど音は柔らかくなく、多少ノイジーで堅めですが深みと奥行きがある印象を受けます。

絵本『スーホの白い馬』に出てくる楽器です。

↓参考動画

www.youtube.com

演奏の時だけは、真剣に聴いていました。

民族楽器も好きだったし。さすが音大生。

 

 

それで、休憩時間を挟み講演会は後半を迎えます。

さっきまで僕を含み、死んだ目をした多くの来聴者達は水を得た魚の如くその目を輝かせ始めたのでした。

みんな暇だったんだね。

ここに来て司会がもったいぶりやがります。

「えー皆さん。それではですね。本日はモンゴルに縁がある方をお招きしているということですが~~。ゲストに、なんと、なんとですよ~~~?」

 

もう壇上スクリーンに

~ようこそ白鵬関 モンゴルってどんな国!?~

とか映し出されてるのにクソ芝居打ちやがるんですよ。

アメリカだったら手榴弾とか投げつけられてますよ。

 

「どうぞ拍手でお迎え下さい!第69代横綱白鵬関です!」

拍手大喝采白鵬が舞台袖から出てきました。

いやいやでけぇ…!

テレビで相撲はよく見るものの、生の力士を目の当たりにするのはこの時が初めてでした。

現在のWikipediaには白鵬の身長192cm、体重155kgと書かれています。

僕より10cm以上高い。体重においては約2倍です。

いつも相撲界を牽引している大横綱が目の前にいるのかー!と感動です。

テレビで見る場所中の気迫のある表情とは打って変わって柔和な笑顔と語り口で母国の事を話し始めます。

第69第横綱白鵬 Wikipediaより。

モンゴル人力士って皆日本語がとても流暢ですよね。

部屋に入って日本語しかない環境に置かれると自然に順応してしまうものなのでしょうか。

白鵬も例に漏れず、とてもキレイでわかりやすい日本語を話しますし、冗談なんかも言って笑いを取ったりしていました。

来日したての頃の話、新弟子検査を受けて初土俵を踏んだ話、文化や習慣全てがモンゴルと異なり苦労した下積み時代の話、最近の大相撲の話等を話してくれました。

 

いやーめちゃくちゃ楽しかった。来て良かった。

叔母に感謝だな。と思い大盛況の内に講演会は幕を閉じたのでした。

 

 

講演会が終わり、ロビーに出てくると大勢の人だかりが。

どうやらロビーで少しの時間サイン会をやるようです。

しまったー。サイン書いて貰う準備してくるんだったー。

母親は「もうおわったからいいじゃん。帰ろうよ」とか言ってたんですがもっと近くで白鵬を見たかった僕は少し粘ります。

しかし人波はどんどん大きくなるばかりで一向に収まる気配がありません。

「仕方ない…そろそろ諦めて帰ろうか」と母に言うと

いつも通り意味わかんない理由で母親と叔母の姉妹喧嘩が始まっていました。

 

母「だからさっき言ったじゃん!」

叔母「違う!私はそういう意味で聞いたんじゃないのよ!」

 

物心ついた時から見てる2人の喧嘩です。

その内勝手にそっちも収まるだろうと思って辺りをウロウロすることにしました。

その瞬間、僕を襲ったのは急な便意です。

もうこの頃から膀胱はバグってましたが、お腹も中々弱いです。

たまらず僕はトイレを探しに出かけました。

 

しかし、会場に一番近いトイレは帰る人達の長蛇の列によってほぼ封鎖状態。

「あっ。これはあかん漏れる」

それで他のトイレを探していたら、結構入り組んだ構造の建物でして、よくわかんない通路に来ちゃったんですね。

人気も殆ど無い、関係者しか入っちゃいけないんじゃねーのってくらい静かな場所でした。

「いや、今関係者とかそんなこと言ってられん。トイレどこ!!」

鬼の形相で便意を我慢しながら彷徨う僕の目の前に遂にトイレマークが。

「これで助かった!」

無事に用を足して手を洗います。

この時、トイレにいたのは僕と恐らく同じ来聴者であっただろうおっちゃんの2人だけ。

僕と同じような理由かはわかりませんが、このおっちゃんも人混みを避けてこのトイレにたどり着いたのでしょう。

 

携帯を見ると母親から『どこにいるのー?帰るよ。ロビーです。』とメールが入っていました。

携帯を閉じて長い廊下に出ます。

 

するとなんと、あの大横綱白鵬がサイン会を終えて僕の方に向かって来るではありませんか!

 

おっちゃんとお互い驚いて目合わせちゃった。

付人と会場の係員が2人くらいいましたが、白鵬は楽しそうに話しながら歩いています。

普段のぴあかな君はかなりの人見知りで、絶対自分から話した事のない人に話しかける

なんて事はしません。

しかしこの時はわけが違いました。

目の前にあの大横綱白鵬がいる!マジで目の前。わああああああああああ

話しかけて無視されたらどうしよう!とか考える前に勝手に体と口が動きました。

人間いざとなったらどうにでも動けるものです。

 

「いつも見てます!頑張って下さい!」

頭が真っ白で月並みな声援しかかけられませんでしたが、それに対してなんと白鵬

「ありがとうね」と言って右手を差し出してくれました。

僕とおっちゃんは白鵬と握手をする事が出来たのです。

もうそれからすっかりファンですよ。

横綱の品格が問われる時期もありましたが、僕はファンなので最後まで応援しました。

引退を発表した時はなんか心に穴が空いたような気分。推しのアイドルが引退しちゃった時ってこんな気分なんですかね。

 

本人を目の前にするとその体はトラックのように大きく見えました。

握手をしてくれたその手は指先まで筋骨隆々で、僕もピアノを弾く上で手が大きいとは良く言われるのですが、全く違ったジャンルの手の大きさでした。

こんな巨体でぶつかって来て張り手の一本でも浴びせられたら僕なんて文字通り『瞬殺』されるんだろうなと思いました。

全盛期の白鵬 Wikipediaより。

白鵬の去って行く後ろ姿を見ながら僕はおっちゃんと無言で目を合わせニヤニヤするのでした。

しまったー。サイン書いて貰う準備してくるんだったー。

その後、母親と叔母と合流して直ぐに白鵬と握手したことを伝えました。

めっちゃ羨ましがられた。

あなた方が喧嘩をしてくれたおかげですぐに会場を後にしなくて良かったんだもの。

感謝です!

 

 

あと僕のう○ちくん!僕をあのトイレにいざなってくれてありがとう!

 

今のところ生涯唯一便意に感謝した場面です。

やはり運をはこぶんですね。うんだけに。

 

 

 

お後が宜しいようで。