Piakanaの日記

音大ピアノ科卒。クラシック、ポップス、ジャズさまざま弾いています。音楽の事、日常の事など不定期投稿していきます。YouTubeに動画投稿していますのでリンク欄からご覧下さい。

やるやる詐欺

 

 

「ばあちゃん!俺だよオレオレ!」

 

「あんた正一かい?」

 

「そうだよ!正一!ばあちゃん大変なんだよ」

 

「正一どうしたんだい?」

 

「俺、会社で仕事をミスしちゃってその損害が100万円なんだ。勿論会社が補填してくれるんだけど、ほら俺の会社小さいじゃん?今すぐ全額出すってわけにも行かなくて、半分の50万円をとりあえず俺が立て替えなきゃいけなくなったんだ。」

「あらそんな大変じゃない

 

「だけど俺今手持ちが全くなくてさ申し訳ないんだけど俺の口座に50万円振り込んでくれないかな

 

「そりゃあ可愛い孫を助ける為ならばあばが振り込んであげるよ」

 

「ありがとうばあちゃん!本当に助かるよ!じゃあ口座番号と支店名なんだけど

 

 

もはや古典的形式美すら感じさせる『オレオレ詐欺』の事例です。

およそ20年程前に、このような詐欺が流行していました。

 

こんな電話がかかってきた時どうしようか。

当時、我が家でもそんな議題が上がりました。

詐欺グループがどこからどのような情報を得ているかはわからない。だから電話口の相手(息子と名乗る男)に対して「じゃああんたの誕生日は?」とか「じゃああんたの弟の名前は?」とか言う個人情報の質問を投げ掛けるのは危険です。

何かで口を滑らせてしまったら逆手に取られてこちらの情報を更に提供してしまう恐れがあります。

それに詐欺師グループは名簿などを駆使し家族の情報くらい手にしている可能性もあるからです。

 

そこで殆ど家族とその周りの親しい人しか知らない我が家の犬の名前を質問してみようと言うことになりました。

単純ですがセキュリティ効果は抜群です。

どんなにテンパっていても普段生活を共にしている犬の名前なんて忘れる筈はありません。

それでいて、詐欺師側は飼い犬の名前を名簿からは得られないので良い合言葉となります。

 

当時中学生のぴあかなは合言葉というものに強い憧れがありました。

戦争映画の中で味方同士が「雷鳴!」「閃光!」なんてやり取りをして意思疎通を図るシーンとか見てそう思ってたんでしょうね。

え、めちゃくちゃカッコいいやん。絶対周りにわからない超カッコいい合言葉作ったろ。

そんな事を考えながら無い知恵を必死に絞り出しながらこんな合言葉を考えて家族に提案しました。

 

「合言葉って言われたら『海賊王に俺はなる!』で良くね?」

 

全てを言い終わる前に食い気味に

「ペットの名前なら向こうもわからないよね」

「賛成ー」

「犬の名前ならこっちは絶対わかるし相手は絶対わからないだろハッハッハッ」

 

議題は進みます。

もう僕は末端野党です。

現代日本に現れたファシズム政党レベル。

 

 

確かに考えてみれば、本当に自分が何かに事件や事故に巻き込まれて家族に電話をかけた時に、周りに人がいる状況で『海賊王に、俺はなる!』なんて言おうもんなら、もう僕そのものが事件です。

その点、犬の名前なんて3文字ボソッと言えばいいだけなんだから合理的。さすが大人の考える事は違うぜ。

 

警察も対策や啓発に取り組み、典型的なオレオレ詐欺は下火になったかと思いきや、新手の詐欺がまた現れます。

電話口に偽家族、警察、弁護士等代わる代わる様々な登場人物が現れる劇場型詐欺なんてのも出てきて、まさに警察と詐欺師のイタチごっこです。

騙した相手から直接現金を受け取る『受け子』。

電話をかけて相手を騙す『掛け子』。

これらは、詐欺グループの末端でありマニュアル通り動いていていざとなったら足切りされる使い捨てみたいな人材です。勿論、警察に捕まるリスクも高いです。

問題は、その上に潜む上層部の詐欺師。彼らは、非常に巧妙かつ狡猾です。

足がつかないよう緻密に詐欺計画を考え、そしてグループ全体を統括する事のできるブレーンをも持ち合わせています。相当頭が切れる人物であるに違いありません。

もっとその脳みそを世の中の為に役立てれば良いのになーっと思うんですけど、やっぱり儲かっちゃうんでしょうね。

つまり、それだけ騙される被害者が多いという実態があるという事。

 

こういった詐欺への対策としては、やはり合言葉を決めとくというのは1つの有効な手段となり得るのではないでしょうか。 

 

 

 

もう1つ特殊な撃退法の例があります。

 

それをぶちかましたのがぴあかなの叔母なんですけど。

この叔母が変わり者といいますかなんというか、色々レジェンド級の逸話を量産している人物。

まあこの人はとにかく高圧力で喋りまくるんですよ。

親戚ならもう慣れてるからあーはいはいで済むんですけど、これが赤の他人だったら相当パンチが効いてる人物だと認識されると思います。

この叔母、甥や姪を孫のようにもの凄く溺愛しているわけなんです。

しかし、圧が強すぎてその愛はかなり一方通行。

更にしかし、そんな事はお構いなしで常に大谷翔平クラスの全力ストレートを投げ込んでくるのが彼女のコミュニケーションスタイル。

だから、僕から連絡なんてする事はあまりないんですね。

特にこっちから電話を掛けようもんなら間違いなく1時間は捕まるから極力メールで済ますようにしています。いい人なんだけどね。

 

 

そんなある日の朝、叔母の元に一本の電話が入ります。

 

「もしもし、俺だけど。」

 

2020年代にこんなにもベタなオレオレ詐欺の切り出し方をする奴がいるのかよと思う程の導入部です。

 

それを聞いた叔母は

 

「まぁ!!ぴあかなちゃん!?」

 

初手で僕の名前を提供しました。ちょろすぎ。

相手は喉から手が出る程欲しがる情報をたった9文字で手にしたのです。

まあ幸いにも叔母が呼ぶ僕の名はいつも本名を縮めた渾名です。

そこからは、性別すら判断できないからノーダメですので助かりましたが。それにしてもセキュリティもクソもありません。本名バラしたらどうすんねん。

 

「そうだよ。元気にしてた?」

 

「あらやだわぁ!ぴあかなちゃんから連絡くれるなんてー私嬉しいわー。」

 

普段、若干煙たがられていると感じているであろう甥からまさかのモーニングテレフォン。

まず僕から朝に電話が来る事自体を怪しめよと思うんですが、有頂天な彼女にそんな思考はありません。

 

「元気そうで良かったよ。」

そして、詐欺師は本題を切り出そうとしますが

 

「いやねぇ!もう本当に!嬉しくなっちゃってー。私ね、今日はこれから都内に出て、あ、都内へ行くにはバスとあの電車に乗ってね!電車って言えば、ぴあかなちゃんあなた小さい時私と一緒によく電車見たのよー。あなた電車好きだったのよー!小さい時の夢は電車の運転手さんって言ってたわ!今はこんな大きくなっちゃってブハハハハハハ!そりゃ私もおばあちゃんになっちゃうわね!あーあ。それでね!」

 

「ははっ...

始まりました。

初手で一気に叔母の土俵に相手を引きずり込みます。

詐欺師に息つく間も与えません。

 

「今日は11時から中田さんと山口さんと3人でご飯に行くのよ。中田さんは前の仕事で一緒だった人で、山口さんは教会で知り合ったお友達でね!今度ご飯行こうって話になってたんだけど中田さんがこないだ腰を怪我しちゃってね。さあ治ったから行きましょうってなったところで今度は山口さんが風邪をひいちゃって中々予定が合わなかったのよー。それで今日やっと3人の予定が合って行けることになったんだけど」

 

テンション上がるとマジでこの量をワンフレーズで話すからたまったもんじゃありません。

詐欺師はズブズブと底なし沼にはまっていきます。

 

「今日行くお店はね、美味しいイタリアンでワインが美味しいんですって。でもほら私お酒飲むと一杯ですぐ顔が真っ赤になっちゃうじゃない?だから人前でお酒飲むのが恥ずかしくて恥ずかしくて!酔っ払ってるわけじゃ無いのにお猿さんみたいになっちゃってブハハハハハハハ!ぴあかなちゃんもよく知ってるでしょ?あの顔は恥ずかしいわよね!それでね、中田さんはね」

 

もう彼女の独壇場。

ナチの演説の如く熱弁します。

 

ここまでで詐欺師が得た情報は、ぴあかなの渾名と叔母の友人の名前、叔母の酒の回り方。お金を取ろうとする上ではカスみたいな情報ばかりです。

詐欺師は、その後も延々と老人の1日のタイムスケジュールを聞かされ続けることになります。

一方的に話を聞かされてるだけなのに何一つの有益な情報が得られない。

こんな苦行はありません。

なんなら朝からご苦労様ですと詐欺師側に同情したくなる。

もしかしたら黙って話を聞き続け、その中から情報を得てやろうという魂胆かも知れませんが、うちの叔母の話の薄っぺらさを舐めてもらっては困ります。

ベテラン詐欺師なら何か手は打つんでしょうけど、恐らく若手だったのか、とにかく叔母の勢いに圧倒されて辛うじて相槌を打つことしかできなかったようです。

普段、僕も相槌しか打たないでやり過ごしているので、その態度が余計僕を演じ切れてしまって信憑性が増してしまったのかもしれません。

相手は「うん」「ふーん」「あーそうなんだー」くらいしか言わなくなっていたようです。わかるっ!わかるぞその気持ち!

 

これ以上叔母に肉薄するのは、時間的にも肉体的にもノルマ的にも損だと思ったのか

「あ、じゃあまた今度連絡するわ」と言葉を残し、一方的に電話を切ってしまったそうです。

 

急に電話を切られてしまった叔母は、まだ興奮冷めやらぬ状態で僕の母親に電話してきました。僕の母親にまで報告したかったとか余程嬉しかったんでしょうね。

 

「さっきねぴあかなちゃんから珍しく電話があってね!もう私嬉しくなっちゃってね!朝から私に元気なんて聞いてきてくれて!こんな珍しい日もあるんだって。で、今日なんだけど中田さんと山口さんと3人でご飯に行くのよ。あなた山口さんって覚えてない?ほらずっと前教会で…

 

なぜか再度、自分の土俵をセットして母親相手に相撲を取り直そうとしたところ…

 

「……あんた誰と話してたの?ぴあかなうちで寝てるんだけど」

 

ここでやっと詐欺電話だと言うことが判明。

 

「私、何か変なこと喋っちゃったりしなかったかしら?」

叔母は、僕の家族側の心配を頻りに心配していましたが、我が家の意見は「大丈夫よ。どうせあんた大した話してないから」であっけらかんとしていました。

最終的には、叔母は詐欺電話がかかってきた怖さより、僕に話を聞いてもらえてなかった事の方がショックが大きかったようです。そこじゃねーだろとずっと思ってましたが。

 

かなり特殊な詐欺の撃退法を紹介しましたが、誰もが成せる技では無いと思います。

話術に長けた詐欺師をある意味別の話術で抑えこもうというのだから、場合によっては危険です。

皆さまは迷わず警察に連絡しましょう。

 

 

何故オレオレ詐欺の話をしたかというと、語感が似ている『やるやる詐欺』というものがありまして。

こちらは、「僕、これやります!」と意気揚々と言っていたことをいつまでも実行に移さず先延ばしにすることを指します。

それがぴあかなYouTubeチャンネル開設問題です。

色々と諸事情があって開設に踏み切れないのですが、いくつか原因をあげると

 

  1.ピアノ自体の調子の問題

先日、調律をしてもらったのですが、やはりどうも調子が悪くて。

誰が聴いても「この辺の音おかしいやろっ」っていう状態なので、もう少し時間をかけて調整してもらいます。もう20年以上使っているピアノなので色々ガタがきている。

 

 2.ぴあかな自身の指と意欲の問題

学生時代が終わってから、フルタイム勤務を何年もしている内にピアノに触れる時間が減り、指が鈍ってしまって変な癖とかついてます。時間がある時には弾いたり、演奏活動も続けてこれてはいたのですが、明らかに右手の動きが衰えており、自分では満足できていません。

早く動画あげたいなー色んな曲やりたいなーというのと、指動かないし始めても続かんかなーという葛藤があります。

それでも最近は、まとまった時間が出来たのでその癖を克服する意味でもYouTubeに動画をあげていこうかと前向きに考え始めています。

少しでも指を治してから動画を投稿できるようリハビリ中ですので、待っている人がいるかどうかはわかりませんが、もうしばらくお待ちくださいませ。

 

X(旧Twitter)には、短い動画をたまにあげようと思いますのでそちらもご覧下さい。

ぴあかな(@piakana26j3)さん / X (twitter.com)