Piakanaの日記

音大ピアノ科卒。クラシック、ポップス、ジャズさまざま弾いています。音楽の事、日常の事など不定期投稿していきます。YouTubeに動画投稿していますのでリンク欄からご覧下さい。

ピアノのペダル

 

「いや、自分食っても太らない体質なんで」

 

10数年前は、飲食店の券売機前での決め台詞でした。

「月に代わってお仕置きよ!」「この紋所が目に入らぬかっ!こちらにおわすお方をどなたと心得る!恐れ多くも先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!一同!ご老公の御前である。頭が高い!控えおろう!」レベルの頻出ワード。

毎週ならぬほぼ毎回言ってた。

身長180cm弱にしてそれに対する平均体重-10kgを維持できていた20代。そりゃあ驕ります。

10歳程、年の離れた知人には「俺もそう思ってる時期があったよー。でも30超えると来るからね。」と言われていました。

そんな警告も何のその。この体質、不敗神話は未来永劫続くと思っていた。

 

 

嘗て、ヨーロッパを席巻し栄光を手にしたナポレオン。

当時、彼は百戦錬磨の軍人としてヨーロッパを我が物としたのです。

有名な最盛期のナポレオンの肖像画

 

彼の残したとされる有名な言葉で『世の辞書には不可能の文字はない』というものがあります。こりゃあ相当驕ってます。

画像を引っ張り出してまで説明するのもどうかと思いますが、何が言いたいかというと、当時ぴあかなの食欲にも不可能の文字はなかったのです。(当社比ならぬ当人比)

家族団欒の食卓で母親が料理を多く作り過ぎちゃった。父親が飲食店で頼んだメニューの量が想像以上に多かった。そんな時、一家に一台あら便利。バキュームカーの如くその処理を買って出ていたのでした。

マジで食っても飲んでも大して運動しなくても体重の変化がなくて無敵だと思ってた。そんな特異な体質に産んでくれたお母さんありがとうでした。

 

しかし、栄枯盛衰は世の習い。

 

30半ばを前にして、ぴあかなの食欲不敗神話にも陰りが到来しています。

いつピアノのペダルの話がでるの?とお思いの方いるかと思いますが、もうしばらくお付き合いください。

 

1804年、ヨーロッパの大部分を手中に収めたナポレオンはフランスの皇帝になりました。次に彼が標的としたのは東の大国「ロシア帝国」です。

1812年6月、ロシア領土に侵攻したナポレオンは、戦における天賦の才でこれまでの戦いと同じようにロシア軍の殲滅に臨みます。

しかしロシア軍は勝手が違いました。

ロシア軍は広大な領土を生かしフランス軍をロシア奥地に引き込み持久戦に持ち込んだのです。

やっと拠点を占領できる!小休憩だ!そこに食べ物もあるだろう!そんなフランス軍の希望を打ち破るロシア軍の焦土作戦。彼らは正面切っての戦闘を避け、フランス軍に取られそうになる拠点を破壊しながら後退していったのです。つまりフランス軍に拠点を占領させるメリットを与えなかったのです。

『軍隊は胃袋で動く』これもナポレオンが残したとされる言葉です。要は『腹が減っては戦はできぬ』のナポレオンVer.。軍隊の食事事情の重要さを理解していたナポレオンですが、補給線も伸びきり食糧の供給にも陰りが生じます。

9月、苦戦を続けながら首都モスクワに入ったフランス軍はここでも焦土作戦の影響を受けます。

モスクワはロシア軍自らの手によって焼け野原になってしましました。

それに加え補給線も限界に達し、兵站に大きく支障がでます。

そして最大の敵、ロシアの冬将軍フランス軍を襲いました。

これには、百戦錬磨のナポレオンもお手上げ。以後、敗走に次ぐ敗走を重ね総崩れになりました。この敗戦を好機とみた、プロイセンオーストリアなどナポレオンに抑えられていたヨーロッパ各国が反旗を翻し、ついにナポレオンは失脚します。

失脚時のナポレオン

最盛期の精悍な姿の面影はありません。

疲れ切った表情、虚ろな目、シワだらけの軍服、汚れた軍靴、弛んだ様に見える腹部、その姿からは凋落しきった様子が窺えます。

 

 

何が言いたいかというと、ナポレオンの姿を追うようにぴあかなの食欲も衰えてきている。

食欲が衰えるだけならまだしも、まるで2枚目の絵画のナポレオンのような腹になってきてる。あ、この腹似てるなあってのと年齢による衰えを伝えたいが為にここまで1600字も使ってしまいました。

 

さすがにここ最近、太り気味が過ぎると思い、10tトラックより重い腰を遂にあげました。近所に住む友人や妻とランニングに行くという勇断をして週に2回程少し走っています。

ここでもやはり体力の衰えを実感しました。いやもうすぐ疲れる。何なら公園行くまでの徒歩で疲れる。こんなのが20代と同じペースで飯食ってたらそりゃ太るって。

「いや、自分食っても太らない体質なんで」なんてドヤ顔で言えなくなってきてる。

せめて食券機の前で「いや、自分食っても太りにくい体質なんで」とか言って煙に巻いて逃げられるような体型には抑えるようにしておきたい。

 

人体に『劣化』と言う言葉を使うのは本来相応しいかわかりませんが、まだ『老化』と言う言葉を使うには遠いような…

同じ食事を取っていても太ってきたと言うことは新陳代謝が劣化してきたと言うことなんでしょうね。

 

本来、物が悪い方へと物理的に変化することを『劣化』と言いますが、それで言うと我が家のピアノのペダルがそれに該当します。ここからタイトルの件に入っていきます。

まずこのペダルをご覧下さい。

我が家のピアノペダル

 

この3本のペダルの褪色具合。ピアノ弾いている人あるあるだと思います。

使用頻度の高いペダルは褪色が大きい物です。

機能は劣化していないので、このままにしてますが、調律師さんに頼めば磨いてもらえるそうです。

機能としては、

  • 右=ダンパーペダル(使用頻度:高) 

ご利用頻度No.1の大人気ペダルですね。

踏むとダンパーが弦から外れ、叩いた鍵盤の音が延びます。

  • 左=ソフトペダル(使用頻度:中)

ピアノの弦は1つの音に対して2ないし3本の弦をハンマーで叩いて音を出していますが、叩く弦を1本減らし音量、音色を変化させるペダルです。

印象派の音楽である、ドビュッシーラヴェルなんかでは特に多用します。

  • 中央=ソステヌートペダル(使用頻度:低)

何それおいしいの?レベルなペダル。ある音を打鍵して指を離す前にこのペダルを踏むと、打鍵した音だけダンパーが外れて延びます。近・現代曲の中でごく稀に使用指定があるようですが、ほぼ使うことはありません。なお、アップライトピアノにおいて中央のペダルは弱音ペダルとなっています。

ちなみに、昔のピアノのペダルは4~6本ついている物もあり、その内には打楽器と連動している物もあり、ひとりで合奏が出来るなんて代物もあります。その時代はピアノというか、その先祖にあたるフォルテピアノという楽器ですけど。

現代のピアノからは想像できないですよね。ピアノに打楽器を付加価値として付随するとは斬新です。全く異なる楽器として見ることが出来ます。

 

 

学生時代のぴあかなピアノをなんか違う用途で活用できんじゃねーのと鼻をほじりながら考えたことがありました。

当時ぴあかなは大学3年生。そろそろ車の免許がほしいと思い教習所を探し始めました。

男はAT限定じゃダサい!MT免許でスポーツカー乗り回してやるぜ!なんて思惑は全くなくて、両親がMTで免許を取っているからじゃあ僕もMTでいいや。AT限定と5000円しか総額が代わらないんだからMTで損はないよなーくらいな感覚です。

あとMT免許を取っておけば、街がゾンビに襲われた時に

「早く逃げないと!あーでもそこにある車マニュアル!ウチじゃ運転できひん!」

「おっとネエちゃん。お困りかい?俺、これ持ってるんだけど(キュピーン)」

「そ…その免許!あなたMT車も運転出来はるんですか?」

「いいから早く乗って!」

MT免許を手に彼女を助手席に乗せ、颯爽に車を動かし危険地帯を脱出。これを機に彼女と蜜月の仲に…という邪な考えはあったかもしれません。

 

入所手続きを済ましてMT車の練習が始まりました。

そしたら最初の所内教習でのMT車の運転の難しさときたら奥さん!

エンジンやクラッチがぶっ壊れんじゃねえのってくらいバッカンバッカンエンストしまくってね。あまりの振動に自分の運転で酔うかと思った。まずペダルの機能やタイミング殆ど理解できてなかった。こりゃあまだ見ぬ彼女をゾンビの手から救う前に自分が車内でゾンビに食われます。

最初の教官、5ちゃんねるでネチネチ書き込みしてそうなメガネ陰キャ。あいつ今でも忘れねえ。

「MTで行くの?…ぷぷっ。そう?頑張ってね…ぶほっww」みたいな嫌味な励ましを励みに何とか見返そうとしました。

でも教習所以外で運転動作を練習する環境って無いんですよね。

どうにかして教習所以外で運転のシミュレーションできないかなーなんて考えていたいた時、ピアノを見るとふとこんな物が目に入りました。

おい、これ見つけちゃったんじゃねーの?閃いちゃったんじゃねーの?

ペダルが3つある!これはっっ!

アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルに見えてきた!いやもうそれにしか見えない!

いや、でもペダルだけあってもねーっと天を仰ぐと…

…ハンドルだ……ハンドルに見える!

照明カバーを外し、そしてポスター用紙を丸めて模擬シフトレバーを作ると…

 

 

教習所が家に来た…

 

 

ひとりでピアノを前に照明カバーと丸めたポスターを持って座ります。より臨場感を増す為にエンジン音やシフトレバー音、ウインカー音、バック音、クラクションをセルフで音当てしてました。

「右よし左よし。ぶうぅーん!」「ギア変更!1速ー2速ーガチャン!」「右に曲がります。チッカチッカ」「バックします。ぴーっ!ぴーっ!」「危ない!puppu--!!!」「人はねました119番お願いします!!」

両親はこんな息子を見て何を思ったのでしょうか。

「考えたねぇ…」とこぼれたのが最大限のフォローだったのか。

兄にも「お前…いくつ」と言われる始末。

もし僕に息子がいたとして20過ぎてこんな事やっていたら謙った意味を全て排した上で迷わず『愚息』と言うと思います。

 

しかし、この練習方法が功を奏したのか運転技術はみるみるうちに向上していき、その後はとんとん拍子で卒検まで終えることが出来ました。

家族に白い目で見られながらも練習した甲斐があったという物です。

最後の方はセルフウインカー音やバック音等、車種による違いも拘ってた。

 

運転免許を取得して10年ほど経ちますが、結局その中でMT車を運転したのはたったの2回。ロードスターと軽トラを運転しただけです。しかもそれも最初の1年目での出来事で、もう9年はMT車に触れていません。多分、今運転しろって言われたら出来ない。

なんか未だにMT免許じゃないのダサいみたいな風潮ありますが、トラックやバスまでAT車が普及してきている今の世の中で、MT免許に拘る理由も無いんじゃないかなと思います。

社用車がMT車で…とかMT車運転が趣味です!だったら話は別ですけど、必要に迫られていなければAT限定で問題ないです。

 

 

現在教習所に通っているという方、久しぶりにMT車運転するよと言う方、家にピアノがあったら照明カバーと丸めた紙を手に、MT運転の練習をしてみてください!

結構、身体の動かし方が近いのできっと良い練習になります!是非!

 

家族にどう見られても知りませんけど。